UWPS のこだわり / SONGS 問題

前置き

別に「難しい話」や「揉め事」の類ではないので、気楽に読んで欲しい。

アルバム一覧を作っていく上で「迷ったんだけれども、こうするのが良いんじゃねぇか」と判断した結果を残しておこうと思い、ここに記しておく。「間違ってる」という誤解を与えないように、また、誤解を与えてしまった人々に読んでもらえるように書き残しておく。


SONGS 問題とは…

アルバム「20th milestone」の帯には、「20枚目のオリジナルアルバム」と書かれている。これは本当だろうか。UWPSでの数え方では18枚目になるのだ。これは問題だ。これについて考えてみる。

結論から言えば、アルバム「SONGS」を「どう捉えるか」によって、この問題は結論が出ることになるので、「SONGS問題」と命名する。


検証 (1)

アルバム「20th milestone」の帯には「20枚目のオリジナル・アルバム」と書かれている。これは本当だろうか?

1984年に本格的な音楽活動を開始して以降、SIONは多くの作品を発表しているが、「オリジナル・アルバム」と表現できるのは、疑いようのないところでは、下記のアルバムが該当する。

  1. SION
  2. 春夏秋冬
  3. SIREN
  4. Strange But True
  5. 夜しか泳げない
  6. かわいい女
  7. I DON'T LIKE MYSELF
  8. 10 +1
  9. 抱きしめて
  10. フラ フラ フラ
  11. SION comes
  12. DISCHARGE
  13. 好きな時に跳べ!
  14. UNTIMELY FLOWERING
  15. ALIVE ON ARRIVAL
  16. 東京ノクターン
  17. 20th milestone

おかしい。「20th milestone」は、18枚目になってしまう。では、どんな他のアルバムを加えて数えているのであろうか?

まず、ライブ・アルバムは除こう。既発表曲のライブ演奏だから「オリジナル」とは呼べない。未発表曲がふんだんに収録されているならともかく、SIONの場合は、それに該当するライブ・アルバムはない。

次にベスト・アルバムも除こう。これはその名の通り「既発表曲の編集盤」なので、オリジナル・アルバムとは呼べない。下記の作品は除外して良いだろう。

ELEPHANT SONG」は、未発表曲 1 曲を除いては既出だし、「別バージョンの未発表曲 5 曲収録」といっても、やはり別バージョンなだけなので、オリジナル・アルバムとは言い難い。実際にはベスト・アルバムとも呼び難いんだが、それは今回さておくとして、これも除外しよう。

'85>'87」は、「新宿の片隅で」「KNOCK ON THE HEART」「風来坊」と当時のライブ音源を収めた編集盤である。
このアルバムは、カセットテープでも発売されており、その収録順序は CD と違って A面 = Live Side、B面 = Studio Side となっている。半分がライブ録音なのだ。しかもライブ録音のうち、半分は初出ではない。「KNOCK ON THE HEART」「風来坊」の収録曲はすべて含まれているが、「新宿の片隅で」の収録曲は網羅されていない。そういった中途半端さも含めて考えてみると、これもオリジナル・アルバムと呼ぶには不適切だろう。よって除外しよう。

…とすると、残るのは下記の作品になる。

KNOCK ON THE HEART」「風来坊」の2枚は、UWPSでは「ミニ・アルバム」と分類している。
それぞれ、スタジオ録音2曲(A面)、ライブ録音2曲(B面)が収録された4曲入り12インチアナログ盤である。そのいずれもが初めてレコードになった曲であり、オリジナル性は高い。しかし、半分がライブ録音という形や、当時のブームであった「12インチシングル」の作品を「アルバム」として捉えていいものか、疑問も残る。今であれば、これらはマキシシングルの扱いである。オフィシャルなプロフィールとも食い違わないので、これらは除外することにしよう。

新宿の片隅で」は、4曲入りの12インチアナログ盤である。フル・アルバムではないが、オリジナル・アルバムとは言えるかも知れない。
SIONの楽曲が世に出た初めての盤でもあるので、これを1枚目にカウントするのが適切との見方もできる。また、すべてスタジオ録音でもある点で「KNOCK ON THE HEART」や「風来坊」とは立場が違う。しかしながら、4曲入りというサイズは、ミニ・アルバム的な要素が強く、若干の疑問も残る。
少し視点を変えてみると、「10 +1」の発売時、「新宿の片隅で」を含めて「10枚目」という扱いだった。…ということは「20th milestone」の場合も同様に考えるのが妥当と思われる。

よって、「新宿の片隅で」を「オリジナル・アルバム」と見なすことにしよう。これで19枚を数えることができた。残るは1枚。


検証 (2)

最後に残ったのは、「SONGS」である。これ以外に選択肢は残されていない。このアルバムを「オリジナル」と呼んで良いのかどうか、が焦点となる。

このアルバムは「SIONが他のアーティストの楽曲をカバーしたアルバム」である。UWPSでは「SONGS」を「カバー・アルバム」と紹介していて、オリジナルには数えていない。

他ではどうだろう。オフィシャルなプロフィールでも「初のカバー集」と紹介されている。SION本人によるうりきちの中でも「カバーアルバムですな。」と語られている。ここでもUWPSでの紹介とは食い違わない。

しかし、ここで微妙な表現を発見する。うりきちの中では「オリジナルのようでもありますな。」と語られている。
確かに「SONGS」に収録されている楽曲は、他者による既発表曲ばかりではあるものの、訳詩をSIONが行っており、原曲の歌詞とは異なる内容に意訳(?)された曲もある。普段、洋楽を聴かない人なら、このアルバムで初めて原曲の存在を知ったという人もいるだろう。そういった意味ではオリジナル性は高い。

では、UWPSではどう紹介していただろう。自ら振り返ってみると、なんと「オリジナルと言える」「オリジナルと言って良い」と紹介している。自分でこう書いたことをすっかり忘れていた。つまり、UWPSでは、発売当初から「オリジナル性が高い」ことを認識していたことになる。

だがしかしっ! ちょっと待って欲しい。別な角度から検証し直してみよう。


検証 (3)

発想を転換して、別な角度から検証してみよう。

これまでSIONは、どれだけ「レコーディング作業」をしているだろう?
「レコード(あるいは CD )を作りましょう」ということになってレコーディングした回数は、「アルバムを新たに作った」という認識に繋がるのではないか。そう考えると、整理しやすそうだ。

検証(1)における最初のリストに挙げた18枚のアルバムは、当然この考え方に該当し、「オリジナル」の「フル・アルバム」になる。この点は、揺るぐ事がない。

ライブ・アルバム、ベスト・アルバムはすべて、「改めてレコーディング作業をしていない」という点で、「オリジナル」作品に該当しない。よって、これらは除こう。

KNOCK ON THE HEART」は 1st Album「SION」の制作時に、「風来坊」は 2nd Album「春夏秋冬」の制作時に、それぞれレコーディングされていて、アルバムに収録しきれなかった楽曲をそれぞれ12インチ盤として発表したものだ。それぞれを録音するために、わざわざ機会を与えられたわけではない。
そう考えると「改めてレコーディング作業をしていない」という点で、「新たに作った」という認識に当てはまらず、これも除外して良さそうだ。

新宿の片隅で」は、もちろんのことだが、「新しく作った」作品だ。もっと適切な表現は「初めて作った」のだ。これを1作目にカウントするのが、もっともふさわしい、ということになる。フル・アルバムであるかどうかは、この場合、まったく関係ない。「初めて作った」という重みには、ナニモノにも代えられない。よって、「新宿の片隅で」を、検証(1)同様、「オリジナル・アルバム」と見なすことにしよう。

そして、最後に残るのが、やっぱり「SONGS」なのだ。
この作品は、国内録音に留まらず、New Yorkでも録音している。それだけ熱のこもった作品である。「新しく作っている」「レコーディング作業をしている」という点で、「オリジナル・アルバム」と言えることになる。

だがしかしっ! 俺の叫びを聞いてくれ。


検証 (4)

SIONはシンガーソングライターである。歌詞とメロディを自ら作る唄歌いである。

歌詞の素晴らしさに注目されがちなSIONではあるが、その実、優秀なメロディメーカーであることを、これをお読みの方々はご存知だろう。ならば、1曲もメロディを自作していないアルバムを「オリジナル」と呼んで良いのだろうか?

SONGS」を「オリジナル」としてしまうことは、なんだかSIONのメロディメーカーとしての質の高さを蔑ろ(ないがしろ)にしているように思えてならない。確かに原曲をろくに聴いたことがない俺などは、オリジナルのように感じながら聴くし、違和感も感じていない。SIONが歌うことで、まるでSIONの自作曲のように聞こえることもある。それでも「区別」はするべきだと思うのだ。

ひどく商業的な臭いを感じるのだ。そりゃビジネスである。CD作って、売って、それでメシを食っていくのだから、売れなければいけないし、売っていかなければいかん。しかし、「カバー集」を「オリジナル」と言っちゃぁいかんだろ、って思うのだ。それは嘘に限りなく近い。

「SIONはメロディを作っていない」という点で、やはり「オリジナルとはすべきでない」と、俺は考えている。
「カバー集でありながら、オリジナルのような作品」だが、決して「オリジナル」ではない。SIONの唄が好きだからこそ、敢えて「SONGS」は「オリジナルではない」と判断し、オフィシャルな分類とは異とするものである。


結論

UWPSの「アルバム一覧」では、これらの検証から、下記のように記載していこうと考えている。

アルバム「20th milestone」の帯には、「20枚目のオリジナルアルバム」と記載されているが、UWPSでは「通算18枚目のオリジナル・フル・アルバム」としている。

新宿の片隅で」は、「オリジナル・アルバム」と言えるが「フル・アルバム」とは言えないし、記念碑的な自主製作盤であることから、特別扱いして、「自主製作盤」と分類している。(自主製作盤について)

SONGS」は「カバー・アルバム」であり、「オリジナル・アルバム」とは呼びたくない。よって「カバー・アルバム」と分類する。

これらの分類や判断は、オフィシャルなモノと異なるが、SIONの唄を愛すればこそ、余程のことがない限り、変更するつもりはない。



管理者宛メール